ピチャン。ピチャン!雫の滴る音が洞窟内に木霊する。

何故だろう。ついさっきほどからエイトの表情(かお)が暗い。元気とお人好しだけが取り柄みたいな奴がだぜ?
ま。思い当たる節といえば、無くもねえけど。なんといってもオレはさり気なく気配りをしてみせるイイ男、ククール様だからさ。
「ようよう。なにやらソワソワしてんな、おっさん。」
「は?」
オレは歩調を緩め、ヤンガスのおっさんの横合いにつく。そして小声で話しかけた。
「なあ、エイトの野郎(オレはもうとっくに気付いているがね)すこぶる元気がねえぜ?」
「!!そ、そりゃあアッシだってとっくのとうに気付いてたでがすっ。ただなんでそうなのかが分かんねーから、こうしてヤキモキして……。」
「ふうん。で。それはそうと、あの麗しの女盗賊とおっさんはデキちまってるのかい?ただならぬ関係のようにオレの目には映ったが。」
「ば!ンな?!…た、ただの悪友だよ、悪友ッ!!」

オレの問いに慌ててまくし立てるヤンガスのおっさん。
おっさんの言うことが本当のことだとして?
魅惑の女盗賊ゲルダは、オレの目の前にいるおっさんに惚れていそうな感じだったが…。信じたくはねえが。
いやはや何時の時代も色恋沙汰は難しい!神サマがくださったこの世の難関のひとつだねえ。
「おお。可愛そうなエイト!自らさえも気付かぬ淡い感情に苦しめられて!
しかもこの荒くれた朴念仁はソレに気付かず、ただ、他の女性に捧げる為、ビーナスのナントカっつー宝石を探すことだけに手一杯。」
涙だよ涙!おっさんが叫ぶ。うっせ。知らね。
オレは御自慢の赤いマントを靡かせ、芝居がかった仕草で大袈裟に嘆いてみせた。
…仲間の為を思ってしてるんだ。決して悪ノリとは思わないでくれよな。
パーティーの雰囲気を元に戻す為、尽力をつくすオレ。なんて格好良い!
もしかしたら我が愛しの君ゼシカがオレに惚れたりなんかしちゃったりして。