69 名前: しまヤン ◆ldu.EVCC7Q [sage] 投稿日: 05/01/11 07:54:11 ID:b9TF2kMZ
34-36を書いた物です。トリとコテ付けます。
またも駄長文ですが投下させて頂くでげす。
スレが下がって他の方が投下されるまでの保守にでもなれば幸い。

注:無茶苦茶ネタバレです。一回目のラプ倒した所からの話です。
ネタバレのわりに仲間の会話とかシチュの細かい所とか微妙に(かなり?)
違う所あると思いますが、書いた人が馬鹿で記憶が飛んでるせいなので生暖かい目で見守って下さい。
ちなみにエロ無しチューも無しです。スイマセン…orz
どちらかというと、っつーか完璧に主→ヤン状態です。
前回(34-36)の続編という感じで。(今回はヤンは兄貴って呼んでます。クク達がいるから。)







































−喜びは一変した。

ゴゴゴゴゴゴ…‥・・
ラプソーンを倒したことで頭がいっぱいだった僕は一体今何が起きてるのかさっぱり分からなかった。
足下の岩に亀裂が入る。バラバラと天井から石の欠片が落ちてくる。
「やべえ!城が崩れるぞ!!急げ!」
ククールの言葉でやっと状況を飲み込めた僕は仲間の無事を確認し、一目散に出口へ向かって走り出した。
「せっかくラプソーン倒したのに、これで死んだら私達かなりマヌケじゃない!?」
ゼシカが足下の瓦礫を除けて走りながら言う。実にそうだと僕は思った。こんなとこで死んでたまるか。
しかし、地震は一層強くなり真っ直ぐ走ることさえ困難になってきた。
パックリ開いた地面の亀裂を飛び越え、どんどん降ってくる岩の破片を右へ左へ除け、僕らは走る。
道を阻む敵には容赦なくギガスラッシュをお見舞いする。それが例え自分たちに酷似したモノであっても。
崩れかけた階段を駆け登ると外からの風を感じた。出口は近い。もうすぐだ。
階段を駆け上がった僕は振り返って最後尾を走るヤンガスに安堵の顔を向けようとした。
−ヤンガス!もうすぐ出口だ!
しかしその言葉は声にならなかった。僕の目に映ったのは
驚きから険しい表情になったヤンガスの顔。そして彼が物凄い勢いで僕に突進してきた瞬間、視界は闇に包まれた。
それらは全て一瞬の出来事だったが、まるでスローモーションのように僕には感じられた。

「うっ‥ぐ‥‥うぅ‥」
誰かの呻き声がする。自分のものなのか、それとも仲間の誰かなのか、それさえも分からない。
頭がズキズキする。何が起きたのかを見極めようと僕は歪む視界を抑え必死に目を開いた。
しかし、目に飛び込んできた光景は
「ヤ‥ッ、ヤンガス!!!」
僕とククールとゼシカの上の崩れ落ちた天井を、たった一人で支えるヤンガスの姿だった。
「うぐっっ‥ぐぉぉぉぉ‥!!」
彼の手に、腕に、背中に、恐らく何トンと言う重さであろう岩の固まりがのしかかっている。
メキメキと骨のきしむ音が聞こえる。
「うあぁっ‥ヤ、ヤ、ヤンガスッ‥ッ」
その信じられない光景に僕もククールとゼシカも言葉を失った。
ヤンガスは最後尾を走っていたおかげで僕らの頭上の天井が崩れたことをいち早く知り
とっさに僕らを突き飛ばし一人でこの天井を支えた。
言葉にすると簡単だが、こんなの人間技じゃない。
「やめろ!ヤンガス!!死んじゃうだろ!!!」
僕はひっくり返った体勢から四つん這いになってヤンガスの元へ駆け寄った。
「兄貴‥へへ、間に合って良かったでげす。‥怪我は‥無いでげす…か?」
額から汗を滴らせてヤンガスがいつもの笑顔で笑う。
「馬鹿!手を離せ!!いくらなんでも無茶だ!」
「そうよ!やめて!」
僕とゼシカが涙声で叫んだ。
「なーに…このくらい…あっしにかかればなんて事ねえでげすよ…っ」
ヤンガスがそう言い終わった瞬間
ゴゴゴゴゴ…!!!!
再び大きく足下が揺れ始めた。
バランスを崩した城は容赦なくヤンガスに負荷をかける。
「ぐぉぉぉぉああぁあああっっ!!!!」
ズゴッと言う音と共にヤンガスの体が一瞬沈んだ。
ヤンガスの足下が陥没し、僕らの足下にも亀裂が走る。
「はや…くっ…!逃げてくだせえ…っ!!建物が、崩れる前…に、はやく…っっ!!」
ヤンガスのくいしばった口元から血のすじが伝う。本当なら喋ってなどいられないはずだ。
「だめだ!ヤンガスも逃げるんだ!置いてなんて行けるはず無いだろう!!」
僕は絶叫に近い声で言う。
「ダメでげ…すよ。あっしが手を離したら…みんな、潰れちまう…。い…いから、あっしに構わず早く逃げ…て下せ…えっ…!」
「いやだ!!いやだぁ!!」
「兄貴!!!お願いでげ…すっ!!あっしは兄貴のためなら…っ命だって惜しくないんで…げすよ…
どうか…暗黒神を倒した…英雄として…生きて下せえ…!!
…兄貴の弟分として仕えられたことが…あっしの糞みたいな人生で唯一誇れることなんでげす…!
どう…か、どうかっ…こんなあっしの為にも、生き延びて下せえっ…!!兄貴ぃっ!!」
−僕は・・・・ただ、涙が止まらなかった。
「うわぁぁあっっ!!いやだぁ!いやだぁぁぁっっ!!」
失えない。失えるはずがない。目の前の愛しい男を。
僕は狂ったように泣きわめきヤンガスの体に手を伸ばそうとした。

「エイト!!」

ビクッと僕の全身が反応した。
ゼシカもククールも驚きを隠せない顔をしていた。
僕の名を怒鳴りつけたのはまぎれもなく…ヤンガスの声で。
「俺の頼みが聞けねえのか!?………頼む………生きてくれ……!!」
ギュッと固く瞑ったヤンガスの目尻から涙がこぼれ落ちた。
僕はただ呆然とそれを見つめていた。
「ククール、ゼシカ、後は頼むでげす…よ」
ヤンガスがそう言うと、はっと我に返ったククールが僕とゼシカの腕を引っ張った。
「走れ、エイト!ゼシカ!」
続いて我に返ったゼシカが涙を拭い、ククールと共に僕の腕を引っ張った。
「エイト!走って!!走って…生きるの!」
…僕は二人のなすがままに引きずられていった。
目に映るヤンガスの姿が段々小さくなっていく。
涙と埃煙でもう何も見えない。
ヤンガス、どこ?
ヤンガス?
ねぇ…


それからは何も覚えていない。
記憶がないと言うより、意識が無かったという感じだ。
敵と戦ったことも、鳥になって城を脱出したことも、全く覚えていない。
意識が戻ったのは−崩れ落ちる城の中心から闇の塊が膨張するのが見えた瞬間。
生きていた。暗黒神は生きていた。しかも、より強大になって。
絶望と怒りが僕を支配していくのが分かった。
「あぁぁああぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!」
こいつが生きていたら
なんのためにヤンガスは戦ったんだ
なんのためにヤンガスは僕らを守ってくれたんだ
なんのために−−−−−−
僕は鳥の姿だと言うことも忘れてラプソーンに突っ込んでいった。
バシッ
闇のゲートから飛び出した怪物が僕の翼を切り裂く。
舞い散る羽根。落下して行く身体。
落下しながら、僕は神様を恨んだ。
このうえない悲劇、このうえない絶望。いくらなんでもあんまりだよ。
何が勇者だ、英雄だ。この地上も愛しい男さえも守れなかったのに。
そして僕はこの絶望の渦の中で死んでゆくんだ。
これが運命だというのなら、恨んでも恨みきれないよ、神様。

ボスッ

柔らかな白い羽根が身体を包んだ。覚えがある風と太陽の香り。

「…レティス…!」
闇のゲートをくぐり抜けて来たレティスが間一髪落ちていく僕らを救いあげてくれた。
「間に合って良かった…一旦ここを離れましょう。」
レティスはそう言うと僕らを背に乗せたまま大きく旋回しラプソーンから遠ざかった。
レティスの温かい羽毛に包まれて、僕はなんだか涙が溢れてきた。
ひっくひっくと情けない嗚咽まで漏らした。
「エイト…」
「泣くな馬鹿野郎。そんな情けない姿、ヤンガスが見たら間違いなく嘆くぞ。」
仲間の励ましさえも今の僕には涙を増幅させるものでしかない。
僕は袖がビショビショになるほど涙を拭った。
と、レティシアの方向に向かっていたレティスが再び旋回しラプソーンの麓に降下した。
「どうしたの?レティス。」
ゼシカが問うた。
「そうそう。貴方の仲間は私が助けておきましたよ。」
「………………え…………?」
降下していく草原の岩陰に横たわる人影が見える。
「まさか…」
「貴方達を救いあげるほんの少し前です。崩れ落ちる城の瓦礫と一緒に彼が落ちていくのが見えたので
私の羽根を飛ばして受け止めておきました。回復呪文もかけておいたので大丈夫でしょう。」
降下と共にどんどん近づく人影は、見覚えのある丸みを帯びたシルエットに変わっていく。
「…生きて…る…?」
僕は声が震えるのを抑えることが出来ない。
「気を失っていたけれど大丈夫ですよ。しばらくすれば目が覚めるでしょう。」
「・・・・・・・!!!!」
涙が滝のように溢れる。僕は今日一体どれだけの涙を流したんだろう。
「まったく、呆れるほどタフな奴だぜ。」
ククールが泣き顔を隠すように髪をかき上げる。
「良かった…!レティス、ありがとう!」
ゼシカがレティスの首もとに抱きついて泣いた。

神様、ありがとうありがとうありがとう。
「あはは…あは、あはははははははは……」
僕は、ただただ溢れる涙と笑いを止めることも出来ずにいた。
「不謹慎な奴だな、暗黒神が生きてたってのに大笑いしてやがる。」
ククールが僕を見て苦笑した。
降下が待ちきれず僕はレティスの背から飛び降りた。
転げるように ヤンガスの元へと走りながら、なんとなく
−僕はいつからこんなにヤンガスの事を好きになったんだろう?−なんて事を思っていた。

おしまい