何かにつけて口や手を出したくなるのは、希望と理想がそこにあるからさ。
「すげえ意味が不明な言葉だな。」
ヤンガスのおっさんが、いかつい顔をしかめる。オレは酒場の薄暗い灯りに揺れるワインの色を楽しみながら、グラスを傾けて喉奥で笑った。
「だから。ああしろ、こうしろってオレが言ってるのは、おっさんをからかいまがいにけしかけているワケじゃなくってさ。実はオレが自分にして貰いたいことなんだって。」
「はあ?」

――して、貰いたいけれども、それは決して叶わねえことだから。あのプライドの高いカタブツは絶対にそうはしてくれないだろうから。
望みを見込みのあるおまえらに託したくなる。
「手が届いて、ましてや耳に声が届くのなら。頑張って欲しいじゃんよ。くっついて欲しいんだって。」
口端を釣り上げ、本心から笑ったオレに。ヤンガスのおっさんは一瞬呆気にとられたような驚いた顔をした。
ははあ。オレにしては真面目なことを喋ったからか。

「…ククール、実はひょっとして、お前はスカした野郎じゃなくて、すごくいい奴なんじゃねえのか?」
「なんだよ。ハハ、やっとわかったのか。」
肩を揺らしてオレは笑う。そうだぜ、オレは根はいい奴なんだ。兄貴よりゃ―――…が、少々足りないけれど。
あーあ。やべえ。ちょっと酔っちまったかな。