エロティック注意







































地下の牢獄に閉じ込められたエイト、ヤンガス、ククール、ゼシカ4人はどうすることもできずに途方に暮れていた。
二ノ大司教の嘆きの声と、生を諦めた囚人のうつろな吐息だけが響き渡る。かけらすら差し込まぬ、日の光から閉ざされたこの場所では、時間の経過を知ることも難しい。

「・・・ハア、ハア・・・だめでがす。びくともしませんぜ」鉄格子を曲げようとしていたヤンガスが座り込んだ。
「おっさんのバカ力でもだめか・・・。ま、そんな簡単に破ることができたら、牢屋の意味なんかないが」それまで沈黙していたククールが投げやりに口を開く。
「アニキ、どうしやす?」
「・・・とにかく今は考えよう。力を温存しておくんだ。ボクは諦めることだけはしたくない、今までだってそうだったじゃない。」
「そうね。あせっても仕方がないわ、エイトの言うとおりね。でも、何かきっかけがあれば・・」呪文が打ち消されるこの場所では、魔法で逃げ出すわけにもいかない。
そして、また沈黙。唯一の時を知る手立ての昇降機の音のみが響き渡る。見張りの交代の時間らしい。

そして、変化は訪れた。

「おい、そこの囚人。外に出ろ」指し示されたのはエイト。「そうだ、そこのリーダー各のやさ男だ・・・尋問官がお呼びだ。ふん、きれいな顔をしているな・・・」
「アニキ、だめでがす。あっしが変わりにいくでがす。何をされるかわからないでが・・ゲフッ」鉄の棒がヤンガスの腹に食い込む。たまらず、座り込む。
「心配するな。ぐふふ・・・・話を少し聞かせてもらうだけだ。よしんば何かあったとしても、どうせお前らは死ぬ以外の運命はないんだ。何が違う?テロリストを許すほどこの国はやさしくはないぞ」
看守のいやな笑いが、視線が舐めまわすようにエイトに注がれた。エイトはまっすぐに看守を見つめ返す。あくまでもまっすぐに。
「みんな、心配しないで。ボクなら大丈夫。何かが変わるチャンスと思うんだ。信じて」振り返ったエイトの目はゼシカ、ククール、そしてヤンガスへと向かう。
「今行くよ。ただし仲間には手をだすな」
「なかなか素直だな。・・・おっと、手を後ろにまわすんだ」看守がすばやくエイトの手を後ろに縛り上げる。「暴れられても困るからな」
「アニキ!」
「大丈夫、ボクを信じて。」エイトは引きずられるように、看守に連れてゆかれる。
「安心しろ、次はお前たちを呼んでやるからな、ゲッゲッゲ。」
奥で扉が閉まる瞬間、振り返ったエイトの目がヤンガスとあった。
そして、扉は閉ざされた。
「・・・かわいそうに、あの男の子・・」牢獄の隅に座っていた目の鋭い細面の司祭ふうの男が、不意につぶやいた。
「どういうこと?」
「そこに・・ほれ」指差す先には、全身ムチの傷跡が無残に残された盗賊風情の男と、貴族風の女が倒れている。すでに死にかけている。
「やつらは、容赦ないんじゃないんだ。娯楽なんだよ・・・。俺たちは暇つぶしのおもちゃさ・・・」

「おい、こっちだ」エイトの手をしばる紐を強く引いた先には、赤さびた重々しい、鉄の扉が開いていた。まるで血を流しているような色だ。
部屋の中には、獣のようなまなざしをした、筋肉の塊のような男が1人。暗い部屋の中、ランタンの光が照らすのは、鉄の椅子と十字架。拷問道具の数々・・。
床やかべの黒ずみは、乾いた血か。
「だれが座っていいと言った!」座ろうとしていたエイトの耳元で、獣のような咆哮が響く。声だけでなく、臭いまでまるで獣だ。
「ボクに何が聞きた・・・っぐ。ごほっ・・」冷たい鉄の棒がエイトの腹部を打つ。
「俺が許可していないのに、口を聞くのか?ここのルールを知らないらしいな」
「・・・何がルールだよ・・・がっっ、はっ・・・」みぞおちに食い込む鉄棒に、息がつまる。床に崩れる。あまりの苦しさに涙がでる。
「俺がルールだ。・・・そうそう、素直にしていればいいんだ。俺は優しいんだ。素直に話を聞かせてくれるやつにはご褒美だってやる。いいやつなんだ、俺は」
エイトはまっすぐな目で、ねめつけるように尋問官を見上げた。
「・・・嫌いだな、その目は。まだ自分の立場がわかってないらしい」鉄棒の一撃が背中を襲う。ミシッといやな音がした。「お前があまり協力的でないと、仲間が辛い目にあうぞ」
とたんに、エイトの目に不安の色がともる。尋問間はその色を見逃さない。こうやって何人もの人間を従わせてきたプロだ。いかに勇敢であっても、まだあどけなさの残る少年の齢をでないエイトに勝ち目はない。
「そうだ、少しはわかってきたな。・・・それともうひとつ、俺はきれいな顔をした男が嫌いでね。特にやさしくしたくなる。」やさしさなど、墓場の下に埋めてきたかのようなその顔で言うのか。エイトは上目遣いでにらみつけた。
「まあいい、聞いたことに素直に答えればいい。上からの命令だ。まずは質問させてもらおうか」ぞっとするほどの、笑みがこぼれる。
「・・・・・・・」
「あの杖はいったい何だ?お前たちは何の目的で、大聖堂にきたのだ?いや、そもそも、どうやってあの場に来たのか?」
ラプソーン・・・レティス・・・・仲間たち・・・よぎる光景。こんなやつらに、世界にかかわることを話すわけには何があってもいけない。
「・・・ボクは何も知らない。知っていたって、誰が話しなんかするも・・・あぐっ・・うわあっ」看守のムチがエイトに打ちおろされる。
「まだわかってないな。・・・おい」尋問官はあごで看守に示したさきの十字架は、不気味な傷を見せ、黒ずみは何か生臭い臭いを放つ。
エイトは引きずられ十字架に縛り付けられた。
「服の上からじゃ、ムチの味もよくわからないだろう。おい、服を脱がせ」エイトの顔がゆがむ。「待って、ちょ、やあああああっ」
看守は言い終わる前から、服に手をかけ、一気に引き裂いた。
「何だ、女みたいに悲鳴を上げやがって・・。以外と細い体をしているな。くく・・・ん?」破れた服の下、胸の辺りに白い布がまかれている。
「何だ・・怪我をしているのか。くく、かわいそうにな。・・・おい、その包帯もとってやれ、丁寧にな」
看守は包帯に手をかけ、力の限り引き裂いた。
「いやあああああっ」悲鳴が無残に響き渡る。
「・・・驚いた。久しぶりに驚いたぞ。・・・くくくく・・」尋問官と看守の目は、エイトの胸に釘付けになる。そこには、小さいが形のととのったふくらみが。ふたつ。男のそれではない。
「女か、お前・・ぐへっぐへ・・・」いやらしい笑みが2人の獣の上にこぼれる。
尋問官はエイトに近づくと、まだ少女の域を出ないふくらみを荒々しくつかみ、その耳をなめた。生臭い息が首にかかる。まさに獣のごとく。エイトはその大きな瞳に涙をこぼし、怯えた目で見上げた。
「ひとつ言い忘れていた。俺はきれいな顔の男は嫌いだが、きれいな顔の少女は大好きなんだ。特に気の強い女が、怯えた素直な目で見上げるのがたまらなく好きでね」尋問官の豚のような毛の生えた指が、何も守るものがなくなったエイトの腿と尻に這う。
「じっくりと、話を聞かせてもらおう、時間は永遠にあるんだ」


「いったい、どういうつもりかしら・・」
沈黙を最初に破ったのはゼシカだった。
「いつだってアニキは自分を犠牲にして、みんなを支えてたでがす。こんなときこそ、あっしが・・・」
「大方マルチェロ大司教様のの差し金だろうさ。杖の秘密を知りたいんだろう。看守もいってたろ、俺たちはテロリストだ。何をされるかわかったもんじゃない」
「そんな・・・そんな言い方って」
「やつらにとっては、それが事実だ。真実なんて関係ない」いつものシニカルな笑みは、自嘲気味にククールの口をゆがめる。
「くそっ。こんなときあっしはどうすれば・・・」力で何もできないのは、何度もわかっていた。
「法皇様も死んだ。マルチェロの野郎は今やじゃまするものもいない。まして、杖に操られている可能性もある」
そんな3人のやり取りを聞いていたのか、鉄格子のそばでうなだれていた、二ノ大司教がなにやら決意した目で見つめていた。

つづく