仲間たちと、次の行き先について話し合っていた時だ。
「髪、ずいぶん伸びたわね」
「え?」
ゼシカに声をかけられ、エイトは顔を上げた。
前髪を押さえていた手を離すと、伸びた毛先が頬をくすぐった。
うっとおしくなった前髪を無意識の内にかきあげたようだ。
元々、無頓着なせいか、ゼシカに言われるまで髪の長さなど気に留めていなかった。
「そういえば、トロデーンを旅立ってから一度も切ってないなあ」
バンダナからのぞく後ろ髪は、もう少しでセミロングだ。
「私が切ってあげようか?」
「おっと、兄貴の身の回りの世話はアッシの役目でがす。任せてくだせえ」
という訳で、ヤンガスが散髪してくれる事になった。

バンダナを外し、ケープ代わりに肩にかける。
ヤンガスは器用にハサミを操り、伸びて不揃いになった毛先を整えていく。ちょきちょき……
「!」
突然ヤンガスの手が止まった。そのまま微動だにしないので、エイトは振り返った。
「ヤンガス、終わった?」
「(はっ!)あ、あ、兄貴……あの、その」
「どうしたんだ?しどろもどろになって…」
「な、なんでもないでがす!もう少しの辛抱なんで、前を向いててくだせえ!」
と無理やり前を向かされてしまった。
慌てるヤンガスの顔は、心なしか真っ赤になっているような……
「??」

(い、言えねえ!兄貴のうなじに見とれちまったなんて……)